
景品表示法とは?マーケティングにギフトコードを使用する前に知っておきたい5つの注意点
ギフトコードを活用したマーケティング施策は、即効性と費用対効果の高さから多くの企業で導入が進んでいます。一方で、景品表示法への理解不足により、意図せず法令に違反するケースも増えています。特に、2024年10月1日に施行された「確約手続制度」では、違反の疑いがある企業は自主的に是正措置(確約計画)を提出することで、消費者庁が認定すれば課徴命令や課徴金を免除される仕組みが導入されました。ただし違反企業への罰則も強化されており、最大100万円の直罰や、過去10年以内の違反履歴がある場合は課徴金が最大1.5倍に増額されるなど、厳格な対応が求められます。こうした背景 から、マーケティング担当者がギフトコードを活用する際は、景品表示法の基本ルールと最新動向を正しく理解し、実施前に適法性を確認できる体制が不可欠です。本記事では、ギフトコード施策を安全かつ効果的に運用するために、景品表示法の基礎知識と注意点を詳しく解説します。
景品表示法とは?基本的な考え方と最新の動き
消費者が商品やサービスを選ぶ際に、正しい情報に基づいて判断できるようにするための法律が「景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)」です。この法律は、「実際よりも良く見せる表示」や「不当な高額景品の提供」などによって、消費者が誤って選択してしまうことを防ぐために設けられています。たとえば、優良誤認や有利誤認を招く表現を禁止したり、過剰な景品提供に上限を設けたりすることで、消費者が公平に、より良い商品やサービスを選べる環境を守っています。
景品表示法は主に以下の2つの規制を行っています:
不当な表示の禁止
- 優良誤認、有利誤認、そしてステルスマーケティング(以下、ステマ)は不当表示として禁止されています。
- 2023年10月1日から、SNSやインフルエンサー投稿で“広告であることが明示されていない投稿”も違反対象です。
景品類の制限・禁止
- 景品の価値が取引価格の20%相当、または200円を超えないよう上限が設定され、過度な景品類の提供による消費者の選択の歪みを防ぎます
- 消費者の合理的な商品選択の保護
近年の重要な法改正
2023年5月に成立し、順次施行された改正景品表示法は、違反の抑止と消費者の保護を強化するためのものです。
主な改正内容
- ① ステルスマーケティング規制(以下、ステマ規制):2023年10月1日施行
SNS投稿やインフルエンサーの宣伝は、「広告」「PR」などと明確に表示することが義務化されました。
- ② 課徴金制度の見直し:2023年10月1日施行
過去10年以内に命令を受けた事業者が再違反すると、課徴金が1.5倍に増額されます。
- ③ 罰則規定の拡充:2023年10月1日施行
優良誤認・有利誤認表示には最大100万円の罰金(直罰)が適用され、違反抑止が強化されました。
- ④ 確約手続き制度の導入:2024年10月1日施行
事業者が自主的に「是正計画(確約計画)」を消費者庁に提出・認定されれば、措置命令や課徴金の適用対象から外れる仕組みが導入されました。
ギフトコードも経済上の利益(=景品類)に該当し、これらを提供するときは、景品表示法に基づく景品規制が適用されるということになるため注意が必要です。
景品類の定義(3つの条件)
本法では、以下を満たすものが景品類とされます:
- ① 顧客誘引性:顧客を誘引するための手段として提供
- ② 取引付随性:商品・サービスの取引に付随して提供
- ③ 経済的利益:金銭的価値があるもの(例:金券、ポイント、ギフトコード)
ギフトコードは、コンビニ商品券、電子マネー、Amazonギフトカードのコードなど、はっきりと経済的価値を持つため、上記の条件を満たす場合は景品類として規制の対象となります。
オープンキャンペーンは規制対象外
一方で、商品やサービスを購入しなくても、誰でも自由に参加できるものを「オープンキャンペーン(オープン懸賞)」と言います。オープンキャンペーンで提供される景品は、景品表示法の景品類に該当せず、上限規制は適用されません。
【オープンキャンペーンの例】
- SNSでのフォロー・リツイートキャンペーン
- 無料会員登録の特典
- アプリダウンロードの特典(無料アプリの場合)
マーケティングでギフトコードを使う前に知っておきたい5つの注意点
景品類の分類と上限金額の規制を正確に理解する
景品類は提供方法により3つに分類され、それぞれ異なる上限金額が設定されています。
以下はあくまで抜粋となりますので、かならずご自身でお調べの上、景表法に違反していないかをご確認ください(消費者庁「景品規制の概要」)。
一般懸賞
抽選やクイズなどによって景品を提供する懸賞で、共同懸賞以外のものです。
規制内容:
- 最高額:取引価額の20倍まで(ただし10万円が上限)
- 総額:懸賞に係る売上予定総額の2%まで
具体例:
- 1,000円の商品購入で応募できる抽選:景品は取引価額の20倍(この場合は2万円)まで。ただし1人あたりの上限は10万円まで売上予定総額が500万円のキャンペーン:景品総額は10万円まで
共同懸賞
複数の事業者が参加して行う懸賞です。
規制内容:
- 高額:30万円まで
- 総額:懸賞に係る売上予定総額の3%まで
総付景品
購入者全員に提供される景品です。
規制内容:
- 取引価額が1,000円未満:200円まで
取引価額が1,000円以上:取引価額の2/10まで(※1個または1人あたりの景品額は最高10万円まで)
「取引付随性」の判断基準に注意する
インターネット上でキャンペーンを実施し、景品の引き渡しを店舗で行う場合は、取引付随性があるとみなされ、景品表示法の景品類に該当し、景品規制が適用されるため注意が必要です。
取引付随性ありと判断される例:
- オンラインで応募を受け付け、当選者に対しては実店舗で景品を手渡すキャンペーン
- 無料会員登録を条件にしつつ、登録後に有料サービスへのアップグレードを積極的に促す施策
- 特定の商品を購入した人だけに配布するプレゼント企画
取引付随性なしと判断される例:
- SNSで「フォロー」や「リポスト」だけを条件に参加できるキャンペーン(※購入・契約を伴わないことが前提)
- 商品購入や会員登録を求めない完全なフリー抽選企画
- 申し込みから景品受け取りまでオンライン上で完結するオープン懸賞
表示に関する規制の遵守(ステマ規制を含む)
ステマ規制
2023年10月1日からステマは景品表示法違反となりました。ギフトコードを活用したインフルエンサーマーケティングでは特に注意が必要です。
規制対象となる表示:
- ① 事業者が自己の商品・サービスについて行う表示
- ② 一般消費者が事業者の表示であることを判別困難な表示
対策のポイント:
- インフルエンサーへの謝礼としてギフトコードを提供する場合、広告であると分かる表示(例:#PR、#広告 等)が必要
- 投稿内容の指示や依頼を行った場合は事業者の表示とみなされる
優良誤認・有利誤認表示
優良誤認表示の例:
- 「業界No.1」等の根拠不明な最上級表現
- 効果・効能を実際以上に誇張した表現
有利誤認表示の例:
- 実際にはない「期間限定」「数量限定」表示
- 架空の通常価格からの値引き表示
違反した際の処罰を理解する
景品表示法に違反した際の処罰は金銭的な損失だけでなく、企業の信頼失墜という深刻な結果をもたらします。
行政処分
- ① 措置命令:違法行為の停止、再発防止策の実施、一般消費者への周知等を命令
- ② 課徴金納付命令:対象期間中の対象商品・サービスの売上額の3%(再違反がある場合は4.5%)
企業の評判への悪影響
措置命令が出された場合、企業名及び違反の内容等が公表されます。これをメディアが報道することで、景品表示法に違反した事実は広く知られてしまいます。
実際の影響:
- 消費者からの信頼失墜
- 取引先との関係悪化
- 株価への悪影響
- 新規顧客獲得の困難
直接処罰規定の新設
2023年の法改正で、優良誤認や有利誤認の表示には、直接課徴金が科されるルールが新たに設けられ、違反の抑止力が強まりました。
法令遵守体制の構築
景品表示法違反を防ぐためには、組織的な取り組みが欠かせません。
管理体制の整備
- ① 表示責任者の設置:景品表示法に関する責任者を明確化
- ② チェック体制の構築:広告・キャンペーン企画の法務チェック
- ③ 社内教育の実施:担当者への定期的な法令研修
- ④ 外部専門家の活用:弁護士等による定期的な法的チェック
事前チェックのポイント
企画段階での確認事項:
- キャンペーン形式(一般懸賞/共同懸賞/総付景品/オープン懸賞)の分類
- 景品上限金額の計算と規制への適合性
- 表示内容の客観的根拠の有無
- ステマ規制への対応状況
運用段階での確認事項:
- 実際の応募状況と予算計画の整合性
- インフルエンサー等への指示内容の適切性
- 消費者からの問い合わせ対応
最近の処分事例
措置命令の傾向
2023年度(2023年4月〜2024年3月)に消費者庁が出した景品表示法に基づく措置命令は44件。そのうち13件(約3割)は、「顧客満足度No.1」「最安値」など、根拠の不十分な最上級表現(優良誤認表示)に対して発出されました。
ステマの違反例
医療法人がGoogleマップへの口コミ内容を指示し、投稿者に報酬を支払っていた事案が、ステマ違反と認定されました。一般消費者が広告と気づけない場合、媒体に関係なく、事業者が関与した表示は景品表示法の対象になることが示された事例です。
過去最高額の課徴金
2024年5月28日、消費者庁は中国電力に対し、電気料金の割引プランに関する有利誤認表示を理由として、16億5,594万円の課徴金(過去最高額)を命じました。実際には提供されない割引を表示していたことが、法令違反と判断されました。
景品表示法違反をしないためのチェックリスト
- ① 事前の入念な検討:キャンペーン企画段階での法務チェックは必須
- ② 保守的な運用:グレーゾーンは避け、明確に適法な範囲での実施
- ③ 継続的な監視:実施中も法令遵守状況の定期的な確認
- ④ 迅速な対応:問題発覚時の速やかな改善措置(是正広告や表示の取り下げなど)
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まとめ
ギフトコードを活用したマーケティングは、適切に実施すれば顧客満足度向上と売上拡大を同時に実現できる効果的な手法です。しかし、景品表示法への理解不足は企業に深刻なダメージをもたらすリスクを含んでいます。
- ① ギフトコードも景品類:電子マネーやギフトカードは、商品の購入や契約と関連付けて提供される場合、景品表示法上の「景品類」として規制対象
- ② 2024年改正で罰則強化:繰り返し違反には課徴金率が通常の3%から4.5%に引き上げられ、優良誤認・有利誤認表示には直接的に課徴金が科される制度が新設
- ③ ステマ規制の開始:2023年10月施行。インフルエンサーマーケティングでは、広告であることが一般消費者に明瞭に分かるよう「#PR」「#広告」などの明示表示が必須。事業者が投稿内容に関与している場合、表示責任が発生。
- ④ オープン懸賞の活用:商品購入等を条件としない懸賞(オープン懸賞)は、景品額等に関する規制の対象外。ただし、表示内容や広告手法には引き続き景品表示法が適用されるため注意が必要。
- ⑤ 組織的な対応が必要:個人の知識だけでなく、会社全体の法令遵守体制が重要
実際には、景品表示法違反は悪意を持って行われるというよりは、広告担当者の知識不足、準備不足が原因であることがほとんどです。この記事で説明した5つの注意点を参考に、事前の法的チェック体制を整備し、安全で効果的なギフトコード活用を実現してください。
法令遵守は、マーケティングの自由を制限するものではありません。むしろ、消費者からの信頼を獲得し、持続的な成長を支える重要な基盤です。この記事で紹介した5つのポイントを踏まえ、安全で効果的なギフトコードマーケティングを実践してください。